社員通信 竹花入と季節の花

休眠期に当たる秋から冬にかけて切り出した竹は材料としての質が良いことから、毎年12月の初めに孟宗竹の間引き作業を行なっております。

竹結界、竹垣等の材料として必要な部分は保管しますが、残った端材はただただ廃材としての処分を待つばかりです。

 

年が明け、そんな廃材の山を見ていたら、ふと昔の記憶がよみがえってきました…。

 

入社して1年目の秋のこと、技術顧問から竹の廃材を利用した竹花入の作り方をご教示いただきました。

(簡単に説明しますと、まず適当な大きさに竹廃材を切り出し、節間に花窓用の穴を開け小刀で加工し、上部を削いで紐でくくれば完成となります。)

 

難しながらも、夢中になって作り上げた初めての竹花入れを見て喜んでいたことを思い出します。(この竹花入れは今も大切に保管しています)

2本、3本、4本と作り慣れていくうちにどんどんと横道に逸れ、勝手なアレンジをして台無しになった竹花入れを見て『遊びすぎだ、教えたとおりに作りなさい』と技術顧問に注意され、『すみません』と反省したことを覚えています。

 

『遊びすぎだ』その言葉の真意が何を意味するのか、当時の私には理解出来ませんでしたが、今なら解ります。

竹花入は廃材を切り出したその時から竹を生かす為のデザインが決まっていたこと、基礎を繰り返すことでしっかりとした技術が身に付くこと、そこから初めてアイデアが生まれ、デザインに落とし込まれることを。

 

目の前のものに対峙しないで物事の本質を捉える事は出来ません。

職人としての在り方もまた然りです。

 

受けた言葉に感謝して、初心を忘れず、謙虚に…。

 

10年の歳月を経て、昔の思い出に浸りながら竹花入を作りました。

侘助を生けて。

                    (職人通信2021/1/20 K.O)