鈴木通信 雑木林の花 (2004/05/10号)
雑木林は、里山で思い出されるものはと聞いたときに一番多く思い出されます。日本の里やまは、昭和30年代ぐらいまでは里山の自然環境を完全に破壊せずに絶妙に使いまわしてきました。山や川で採集されたものや、田畑で収穫されたものを食べ、食料の余りもの、家畜の糞尿、更に人間の糞尿までも肥料として使用し、完全な循環型社会となっていました。自然のままの環境ならば裸地は草原から林にと遷移をしていきます。里山では田畑を耕し雑木林の手入れをすることで自然を撹乱し遷移をとめ逆戻りをさせモザイク状の自然の多様性を作り、生物の多様性を作っています。
雑木林では、薪・炭などの燃料や建築材、堆肥の元となる落葉を収穫していました。雑木林は10年から20年ごとに区画を決めて伐採し萌芽更新を繰り返してきました。秋には、下草刈りを行い、その後落葉かきをおこなってきました。薪や炭が使われなくなった後も、シイタケ栽培などが行われていました。
もう一度自分の周りを見回して見ましょう。
自分たちの食べているものの生産地はどこですか、シイタケは、タケノコはどうですか。海外で作られたり、取れたものを食べていませんか。
薪や炭が使われなくなった今、シイタケも海外産になり雑木林がさらに利用されなくなりました。今では、雑木林で利用されているのものは、落葉ぐらいとなっています。
手入れされない雑木林は、木が大きくなり、暗くなり風が抜けなくなります。林床の植物も生えなくなりアズマネザサや、陰樹の林になってしまいます。
5月に入り、雑木林の新緑も美しくなってきました。
1)雑木林 下草刈りが行われた雑木林 (2004年4月23日撮影)
下草刈りが行われるようになった明るい雑木林の中では、林床にいろいろな植物が帰ってきました。
盗掘が多いので撮影場所は秘密です。
2)ギンラン ラン科 キンラン属 (2004年4月23日撮影)
Cephalanthera longibracteata
黄色の花をつけるキンランに対して白色の花のつけることからこの名がある。
3)キンラン ラン科 キンラン属 (2004年4月30日撮影)
Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
4)アマドコロ ユリ科 アマドコロ属 (2004年4月23日撮影)
Polygonatum odoratum var. pluriflorum
一般にナルコユリとして売られているものは、斑入りアマドコロが多い。
5)林の周辺では、日本古来のランのシランが例年よりも1週間ぐらい早く満開となっています。
シラン ユリ科 (2004年4月30日撮影 さいたま市見沼区)
Bletilla striata
(2004/05/10号 鈴木 信晶 著)