社員通信 自宅での剪定のはなし

昨年末、自宅にあるヒマラヤスギの剪定をしました。約60年前、父が子供の頃に植えたものです。ご存知のように大きくなる木なのですいが、車庫の後ろの狭いスペースに生えているため、建物側は枝を伸ばせず不格好になっています。
この木、昔は近所の鳶さんに剪定をしてもらっていました。しかし、鳶さんが高齢で引退してまもなく私が造園の勉強をはじめ、やがて植木屋で働くようになったため、その後は植物の勉強や剪定の練習がてら、自分で手入れをするようになりました。

自分で手入れをはじめたころは、樹形もほとんどトーテムポール状態。ブツブツに切られた太い枝から小枝が爆発したように繁茂しており、見た目は悪いし剪定はしずらいしで大変でした。その後、植木屋の上司や先輩たちから木や剪定について学び、自分自身の気づきも反映して徐々に樹形をつくり変え、15年ほど前に今の樹形に落ち着きました。でも、どうでしょう、よく見るヒマラヤスギの姿とは少し違いませんか?(ヒマラヤスギはよく、公園などの広いスペースでは太い枝を横に伸ばし、その先に針葉の付いた小枝を自然に伸ばします。また、スペースに限りがある個人邸などでは、中程度の太さの枝を規則的な間隔と長さで仕立て、その先の小枝をそろえて樹形を整えたりします。)

樹木の一般的な反応として、太い枝を剪定して残す枝が少ないほど、残った枝の伸びは強くなります(樹種や程度・季節にもより、枯れる場合もあり)。また、その際に枝の分岐以外で切り詰めた場合は、その枝からの萌芽が多くなります(これは、剪定後に樹木内部の水分バランスを保とうとする反応によるものだそうです。根から吸い上げる水の量は剪定前後でさほど変わらないので、葉による蒸散が減って樹体内が水分過多になり幹や太枝が腐ってしまうのを避けるため。)。そのため、太く長い枝を切れば、残された枝はまた長く伸びて葉を茂らし、これが切り詰めの場合はたくさん萌芽します。結果、剪定して出るゴミの量は多くなります。


これを避けるためには、太枝での剪定をやめ、数多くの小枝で樹形を整えるようにします。そう、盆栽のようにすればよいのです。鋏を入れる枝数(=残す枝の数)が多く切る長さが短くなるほど、その反応のエネルギーは分散され、剪定後に伸びる枝のボリュームを抑えられるのです(また、枝の伸びを抑えることで、根の伸びも抑えられるようです。)。
日本庭園の樹木などは、この「小透かし」で整えられていたりします。盆栽もそうですが、場所や目的に合わせて植物の生長をコントロールする先人の知恵を知ったときには、大変に感動しました。

さて、自宅のヒマラヤスギもある程度これに倣い、鋏だけでなるべく細かく手入れをしています。次回の手入れで楽をするためと、1年に1回の手入れでも、あまりボサボサに伸びたように見えないためです。
ただし、枝数が多いため、剪定には多少時間がかかります。しかも、仕事で木に登らなくなってから大分年数が経過している現在、かつて2時間半ほどで終わっていた作業に、先日は4時間もかかってしまいました。たまには木に登って技術・体力の維持に努めなければいけないと痛感した年末でした。ちなみに、正月明けにはこのヒマラヤスギで、6歳の姪っ子とツリークライミングをしました。こちらはこれまた10年ぶりでしっかり筋肉痛になりましたが、はじめての姪っ子は怖がらずに、2階の屋根よりも高くまで何度も登りました。将来が有望かもしれません。

(2021/2/2 D.I)